SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSMを買ってようやく使う機会が訪れたので、実際の使用感はどうだったのかをレビューしたい。
サーキットを走るバイクを撮影
ZX-6Rに乗る友人がSPA直入での走行会デビューを果たすということで、そのサポートのついでとして撮影を行った。カメラボディはCanon EOS 80Dなので、APC-S換算で160-640mmという超望遠レンズになる。
SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSMはContemporaryラインの製品で、SIGMAのレンズの中では使い勝手を重視したモデル。Sportラインとは違いAFスピードなどに不満があるという話も聞くが、モータースポーツの撮影でどれだけ使えるかが気になるところ。
SIGMA USB DOCKでカスタム済み
このレンズはSIGMA USB DOCKを使ってAFやOSの効き方をカスタムすることができるので、事前に設定を変更しておいた。
- オートフォーカス:ダイナミックモード
- 手振れ補正:ダイナミックビュー
- フォーカスリミッター:無し
のカスタムモードを主に使って撮影を行った。標準もちょっとだけ使ってみたのでその比較も後述したい。またOSはモード2(流し撮り用)にすると若干縦ブレが現れることがあったので、モード1(縦横の手振れに対応)で固定した。
※追記:後日改めて試したところ、流し撮りだけを行うのであればモード2固定のほうが歩留まりが良かった。モード1だと手振れ補正が縦にも効く関係か、妙なぶれ方をする写真がいくつか見られた
なお、以下の写真はクリックするとフルサイズ(6000×4000px)で表示できる。全ての写真はJPEG撮って出しで、目線やナンバープレート以外は何の編集もしていない。
手振れ補正の効きは十分。横流しは余裕でこなせる
モータースポーツ撮影の醍醐味といえば流し撮り。被写体までの距離がそこそこ近かったので、シャッタースピードを1/160sや1/200s位まで落とし、焦点距離を300mm前後で撮影してみた。単純に横方向に流すだけであれば、AI FORCUS/AI SERVOを使えばAFは十分に食いつき、かなりカリっとした画が撮れた。
手振れ補正の効き方は十分なレベル。適当に撮るとぶれることもあるので、頼りすぎには注意が必要だが、しっかりカメラを構えて撮影すれば大丈夫なので実用レベルにあると思う。
望遠側絞り開放でも解像度はパキパキ!
シャッタースピードを1/800sまで上げて、400mm望遠側の絞り開放であるF6.3で撮影。絞らない状態でも解像度がかなり高く、ブーツのステッチやジャケットのパンチング、ヘルメットの細かなグラフィック、バイクのメカメカしさまでしっかりと見て取れる。というか絞らない方がきれいかも?
絞り開放で撮影しているおかげで、ガードレールや後ろの木々も柔らかにボケている。ごちゃごちゃとうるさい感じのボケ方ではないので、とても見やすい写真になるように思う。
高速で被写体が近づく場合にAFの追従がいまいち
せっかくの望遠レンズなのでもっとライダーをアップで撮りたい。撮影場所もコースに近づいてグッと寄りで撮影してみた。すると問題が出てきた。
カメラ側に向かってくるシチュエーションにおいて、AFの追従が遅い。
特別にAFが遅いレンズだとは思わないが、Canon純正のLレンズなどに比べるとスピードは確実に劣る。上の写真のようにホームストレートを150km/h以上のスピードで走ってくるような場面をピットロードから撮影しようとすると(撮影時は曇りでちょっと暗かったというのもあると思うが)、カメラボディ側は被写体距離の変化についていっている(ような気がする)のに、レンズ側がそれから半歩遅れてピント調整を行っているような感じがしてちょっと厳しい。ここはAI SERVOの自動追従に任せるのではなく、ONE SHOT AFやマニュアルフォーカスなどで対処したほうがいいかも。
ファームフェアをV2.0へすることで格段に改善
ファームウェアをV2.0へとアップデートすることで超快適なAF性能を手に入れることができた。使い心地が最高に良くなるのでアップデートは必須!V2.0では、接近してくる場合でも離れていく場合でも、かなり食いつきがなった上に、AFの迷いもなくなった。ある程度の速さであれば、AI SURVOの自動追従でもグリグリ食いつける。
引きで撮ると何となくパッとしない
少し引いてコースや他車が入るように撮影してみた。するとなんだか、ピントは来ているしぶれていないはずなのだが、な~んとなくもやっとしているような印象になった(切り取り方がいまいちなのはあると思うけども)。雨上がりで見えない水滴が空気中にある可能性は否めないが…。
静止物は最高に良く撮れる
動いているものがこれだけよく撮れるのだから、止まっているものならなおさらである。撮影日は曇りや小雨が降る状況が多かったが、雨粒の一つ一つやテールランプのぼんやりとした光り方、そしてレザージャケットの質感までしっかりと映し出してくれた。100-400mmレンズをAPC-Sカメラで撮影しているので、広角側でも被写体からはそこそこ遠ざかった状態でないと撮影できないのは難点だが、標準レンズとは違った目線で撮影できるのは面白い。
少しだけ気になるのは、陰や曇りなど少し暗い状況だと若干寒色系の色合いに見える事。これがSIGMAらしい色合いってやつなのか…?僕にとっては初のSIGMAレンズなのでそこはよくわからない。
カスタムしない状態との比較
先述の通り、USB DOCKを用いてAFとOSをカスタムした状態で撮影を行ったが、何枚かは標準状態の設定を使って撮影してみた。そこでわかったことは、
- AFについて
ダイナミックモードにすると、大きくピントがずれていた場合、とりあえず近い方向に被写体があると判断して動くのか真逆の方向にピントが動かされることがあり、結果的に合焦までの時間がかかることがあった。そのため、稀に標準状態のほうが合焦速度が速いのでは?と思うことも。
ピントが近くにある状態であればダイナミックモードのほうが速くピントが合う気がするが、速度にそこまでの違いは感じられなかった。
- 手振れ補正について
ダイナミックビューに設定すると、ファインダーを覗いた状態で手振れ補正が作動していることがわかる程度に、合焦するタイミングでファインダーが揺れる。実際に、標準状態よりもダイナミックビューのほうが歩留まりが高く、手振れ補正の効きが向上している印象があった。
という感じ。AFについては、レンズ横のボタンでフォーカスリミッターを使用してみるとAFの迷いが明らかに減ったので、撮影距離がおおよそ決まっているのであればフォーカスリミッターの設定をしたほうがいい。
重さは直進ズームを使うことで気にならなくなる
メーカー自らが「ライトバズーカ」を名乗るこのレンズだが、それでも重量は1.1kg、80Dと組み合わせると2kg近い重量になるので、70-300mmなどのレンズに比べるとずしっと来る。
しかし専用フードが直進ズームをしやすい形状になっているため、フードを左手で支えるように撮影すると、重さはかなり気にならないレベルになる。使い慣れればズームのしやすさ・速さは格段にUPするし、丸一日撮影していても疲労感は少なかった。純正100-400mmレンズに比べると400gほど軽いのもかなり効いていると思われる。
ただし首からカメラを下げた状態で移動すると、歩いているうちにレンズが伸びていくので、この場合だけはレンズ横のLOCKボタンで100mmに固定したほうがよさそう。
結果:コスパ最強!モータースポーツでも使える超望遠レンズ
実売価格7万円の望遠ズームレンズでこれだけの解像度が得られるのであれば、一体どこに文句をつければいいのだろう?SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSMにはそう思わせてくれるだけの力があった。
確かに一部のシチュエーションにおいてAFの遅さが気になることもあったが、これは撮影の方法でいくらか改善できる。手振れ補正の効き方は100%信用できるほどではないものの、カメラをしっかりと構えるという基本に立ち返れば、流し撮りをしていてもちゃんと被写体を捉えてくれる。今回の撮影においては、様々な設定をテストしたこともあり歩留まりは2/3程度にとどまったが、使い方をきちんと理解していけばもっと精度よく写真が撮れるはず。
今回撮影したサーキットであるSPA直入は、鈴鹿サーキットやオートポリスといった国際サーキットに比べるとかなり走行車両の近くまで寄れるのだけども、それで400mm望遠側を使ってドアップでの撮影もこなせる。つまり被写体までの距離が遠い国際サーキットであれば余裕で撮影できるはずだ。
AFの速さに関しては純正にかなわない。しかしながらやり方次第ではモータースポーツの撮影も十分にこなせる上、解像度も極めて高い。望遠レンズが欲しいが純正は高くて買えない、そう思っている人であれば間違いなく”買い”なレンズだろう。
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