家電屋さんに行ってたくさんのテレビが並んでいる場所を見るとわかるように、モニターは結構色味が違う。PCモニターで多少なりとも色味にこだわりたいならIPSモニターを選ぶべきだが、一万円ちょっとのIPSモニターで正しい色が出ているかどうかは怪しいところがある。
今回僕は、7年前に買った当時1.2万円のPhilips製PCモニターをキャリブレーション(色校正)してみた。使った機械(Spyder X Pro)の価格は2.5万円で、モニター本体の倍以上。正直モニターを買い直したほうが良いような気しかしない。
安いPCモニターにキャリブレーションする意味はあるのか?素直に思ったことを書いていく。
モニターは経年劣化で色が変わる
まず前提として、僕は8年前に買ったEIZO EV2450(購入時で約4万円)と、先述のPhilipsモニター(246E7QDSB/11)を並べて使っている。両方とも24インチFHDモニターだが、EIZO EV2450はビジネス用と言いつつも色味にこだわった「ちょっといいモニター」だ。
買った当時はPhilipsモニターはかなり良い色をしていた記憶があり、EIZOよりもコントラストがはっきりしていた。少し彩度が高すぎる感はあるし、当然色味自体は比べると違いがあるのだが、綺麗さだけで言えば並べても遜色のないレベルだったはず。
それが今となってはこの有様で、同じ真っ白を表示させてもPhilipsモニターは明らかに緑色。ここに人を映すと勝手に血色の悪い人になってしまっていた。モニターの経年劣化とは恐ろしい…。
対してEIZOのモニターは自然な色合いで、特に違和感を覚えたことはない。とはいえ8年も使っているので多少色が変化していても不思議ではない。
なので今回は定番キャリブレーターSpyder X Proを買ってみて、キャリブレーションしてみた。
EIZOのモニターは色変化が少ない
まず8年間使ってきたEIZOのモニターの、キャリブレーション前後の様子を比較してみる。
様々な野菜が写っているが、赤や緑の色がはっきりして美味しそうに感じる。横のカラーバーを見ると分かりやすいが、中央付近の色が薄い箇所において、キャリブレーション後のほうが階調がよりはっきりしたことが見て取れる。
が、素直に言えば、こうやって比較しているからわかる程度の差。ある日突然キャリブレーション後の色味に変わったとして、僕はそれに気づける自信は無い。
EIZOのモニターは長年使っても色変化が少なく、元より色の精度がかなり高そう。やっぱり高い物には高い物なりの理由があるんだなって…。
EIZO EV2450の色域はsRGBで97%だった。
安いモニターはめちゃくちゃ色が変わる
続いてPhilipsの1万円モニターを見てみよう。キャリブレーション前後を比較するとこんな感じになった。
両方とも写真右側にあるのがPhilipsのモニターで、左側のモニター(EIZO)は色変化していない。明らかに緑被りしていたのがEIZOのモニターに近い色合いになった。
ただしEIZOに比べると白がほんの僅かに茶色っぽい。色温度はあわせてキャリブレーションしているのだが、どうやってもPhilipsがEIZOのような白になることはなかった。何故…。
またこちらもわずか差だが、Philipsのほうがコントラストが高めで黒がはっきりしている。スペック上はどちらもコントラスト比1000:1のはずなんだが、買ったときからその傾向はあった。そういうところは維持されている。
写真越しだと分かりづらいが、モニターをまたぐようにウィンドウを置いてみると、若干ある色の差がよく分かる。とはいえキャリブレーション前に比べると明らかに色差が無いし、記憶にある新品時の色の差よりも今の方が断然良い。
モニターの性能差はどうしても出てしまうので、完璧に同じ色にはならない。ただ安いモニターと高いモニターを並べても、ほぼ不満のないレベルにはキャリブレーションできることがわかった。
ちなみにPhilipsモニターの色域はsRGB 99%とEIZO EV2450より好成績。微妙に出せる範囲が各色で違うので、全く同じ色にはならないのかもしれない…。
激安TNパネルモニターでも試してみた
また家族がノートPCのサブモニターとして使っている激安TNパネルモニターでも試してみた。
TNパネルはそもそも色が出づらい傾向にあるが、計測してみても色域がsRBGで88%しか無かった。そのせいかもしれないが、キャリブレーション後は全体的に茶色っぽい画面になってあまりいい感じがしない。むしろキャリブレーション前のほうがまだ自然な色に見えた(色素は薄めだが)。
ノートPCのメイン画面も同時にキャリブレーションしたのだが、どう設定を変更してもTNパネルはメイン画面と色味が合わないし、それらしい色になってくれない。結局キャリブレーション前の設定に戻すしか無かった。
マルチモニター化しているならなおさらキャリブレーションする価値はある
というわけで安いモニターをキャリブレーションしてみた結果だが、
- 安いモニターは色が変わりやすいが、キャリブレーションで復活できる
- 高いモニターの方が色変化が少なく、キャリブレーション後はより美しくなる
- メーカー・モデル違いで厳密に色を揃えることは難しい
- TNパネルはどうしようもない
ということがわかった。
理想を言えば高いモニターを複数台並べたいところだが、それには金がかかりすぎる。メインに高いモニターを据え、左右にサブで安いモニターを並べる使い方をするにしても、色が揃ってないのはストレスが高い。そういうときにキャルブレーターを一つ持っていると、かなりストレスが軽減できる。
またマルチモニターでないとしても、安いモニターは色が正しいか怪しいところがある。だからキャリブレーターで色校正すると、安心して使えるようになるはず。また色が変わりやすく、長年使っていたら確実に変な色になっているので、そういうときにもおすすめできる。キャリブレーターを2~3回使った時点で、モニターを買い替えるよりも経済的になっている。
いずれにしても、安いPCモニターにお金をかけてキャリブレーションすることに意味は確実にある。ただその価値を感じられる人は、まずはそこそこ良いモニターを一つ買うべきだろう…。
コメント