【レビュー】機動力最強の超軽量カーボントラベル三脚!Ulanzi & COMAN ZERO Yは旅に出るために在る

カメラ

三脚があると写真撮影の幅が広がるのはよく分かるのだが、一方で三脚を持ち運ぶのは僕にとってとても面倒なことでもある。地味に重たいし大きいので場所を取るし、その割にあんまり使わない。結果自宅で動画を撮るときぐらいしか使わない物、それが僕にとっての三脚だった。

逆に言えば、軽くて小さくなる三脚があれば持ち運ぶのでは?常々そう考えていたのだが、ここに来てついに魅力的な三脚が登場した。これなら三脚嫌いな僕でも使うかもしれない。

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Ulanzi & COMAN ZERO Y

そうして買ったのが、Ulanzi & COMAN ZERO Y。UlanziもCOMANも中国系カメラアクセサリーメーカーなのだが、その両者がコラボレーションして作った三脚「ZERO Y」ということになる。Ulanziは最近割と有名になってきているが、COMANもビデオ三脚系の商品を豊富にラインナップしていて意外と面白い。両者共に見た目がそっくりな商品があったりするので、OEMなどをやりあっている関係性なのかもしれない。

中には本体の他にキャリーケースと肩紐、不整地用の石突と取扱説明書が付属されていた。

  • 圧倒的な軽量コンパクト
  • シンプルで高い使い勝手
  • 目線の高さまで上がる
  • 気持ち劣る安定感
  • クイックシューに癖あり
  • 付属工具の精度

Peak Design TRAVEL TRIPODに似たコンセプト

この手の三脚をよく知っている人なら速攻で分かるのだが、この商品、Peak Design TRAVEL TRIPODにめちゃくちゃ良く似ている。

細かいことを言えば結構違いはあるし、何より足の形状が円形か変形台形かの違いがあるので全くの別物ではあるのだが、構造的にもそうだし、とにかく「細く軽量、独自構造な雲台搭載のトラベル三脚」というコンセプトは共通している。付属のキャリーケースなんてそっくりすぎる。

ただ、Peak Designのそれはアルミで6万円、カーボンで11万円(2023年2月時点の日本価格)と超絶に高価な三脚であるのに対し、ZERO Yはカーボン製にも関わらず基本4万円弱、セールなどのタイミングでは3万円を切る価格に突入するという圧倒的な価格優位性を持っているのだ。

…まぁ、3万円の三脚が高いか安いかは人によるが…。個人的には超高価な三脚に感じる。だってこれで写真が撮れるわけじゃないし…。

ただ、違うのは価格だけではない。僕もPeak Design TRAVEL TRIPODが発売されたときには喉から手が出るほど欲しいと思ったのだが、ZERO Yが出た今ではこちらのほうがより魅力的に感じている。後発のZERO Yはよりシンプルに、かつ機能性をアップさせていたからだ。

超小型軽量のトラベル三脚

Ulanzi & COMAN ZERO Y最大の魅力は小型軽量であるということ。スペックは以下の通り。

折り畳み直径8.8cm
折り畳み長さ42.3cm
全伸高156.7cm
伸高132.7cm
段数5段
重さ1.1kg
三脚の最大許容容量18kg
雲台の最大許容容量5kg

折りたたむと500mlペットボトルほどの太さになってしまう圧倒的なコンパクトさ、そして実重1143gというとんでもない軽量さなのだ。実は折りたたんだときのサイズは元ネタより若干太く長いのだが、このあたりは円形の足を採用しているので仕方がない部分でもある。そもそもあんな高い三脚買えないので比較することに意味はない。

エレベーターを伸ばす前でも132.7cm、エレベーターを最大まで伸ばせば156.7cmまで上がる。これは身長170cmである僕の目線とほぼ同じかわずかに高いぐらいの位置になる。このコンパクトさでそこまでの高さを実現しているのは驚異的。

エレベーターは写真中央の銀色のレバーを操作することで動かせる。このエレベーターポールが三角形になっていることで、ZERO Yは畳んだときの驚異的なコンパクトさを実現している。

ノーマルなアルミ三脚であるVelbon Sherpa445Ⅱと並べるとサイズ感の小ささが際立つ。圧倒的に小さい。

横回転機能付きのアルカスイス互換自由雲台

ZERO Yにはコンパクトさ重視で基本的に取り外し不可の雲台が装備されている。一般的なそれとはボールの向きが逆になっている自由雲台で、上の写真では左側にある銀色のレバーを開くと雲台の角度を調整できるようになる。

上部はアルカスイス互換のクイックシューが取り付けられており、左側のノブを回せば脱着可能。

金属部品はすべて半ツヤ塗装されており、主に操作系のレバーやノブは銀色、それ意外は青みがかった灰色で統一されている。このあたりの配色センスもいい感じ。

自由雲台は、エレベーターを伸ばさない状態でも約15度前後左右に傾けることが出来る。

エレベーターを若干伸ばせば完全にフリーになり、2箇所の切り欠き部分に入れれば90度まで折り曲げて縦構図にも対応。

自由雲台自体の動きは空の状態だと若干渋い感じもするが、カメラを載せるとスルスル動いて操作しやすい。ガタツキもまったくなく、レバーを締めれば確実に固定される。

写真右側のノブを軽く回すと、雲台上部が横方向に360度回転する。しかも中に液体が入っているらしく、ビデオ雲台のように抵抗感がありながらヌルヌル動くのが気持ちいい。参考程度ではあるが目盛りも付いているので、上部にある水準器と合わせて使えばパノラマ撮影が出来るのが面白い。

また横のノブは引っ張り出すとノブの固定位置を変えることが出来る。このノブはカメラを載せるとどうしても操作しづらくなるので、自分が操作しやすい位置に調整できるのは嬉しい。

ただ、回転の位置によってはノブとレバーが干渉するので注意が必要。

付属工具でセンターポールを分解

センターポール下部には重しを吊るすようのフックがついているのだが、これをくるくる回すと、

3mmの六角レンチが出てくる。だいぶ小さいのにOリングが付いている部分がフリー回転するなど微妙に芸が細かい。でも小さすぎるのでフリー回転しないほうが回しやすい。

この六角レンチ、クイックシューのカメラ固定ネジや三脚根本が緩んだ際の増し締めなどに使えるようにすべてサイズが統一されているのだが、

雲台を90度に曲げた際に現れる穴に入れて、奥のボルトを回すことで、センターポールを二分割することにも使える。これによって三脚の開脚角度を変えたときのメリットが出てくる。

3段階の開脚角度

ZERO Yは三脚根本のレバーを操作することで、開脚角度を3段階に調整できる。これで安定感を増したり、ローアングルでの撮影に対応できる。

またこの状態でセンターポールを外すと、低い位置に雲台をセットできるようになる。地面~クイックシューまでの高さが約18cmと、かなりのローアングル撮影を実現する。

…とは言えセンターポールも上下逆さまに装着できるので、更に低い位置にカメラをセットすることも可能。このあたりは一般的な三脚と同様の機能。

あとここに1/4インチのネジ穴があるのでアクセサリー類の取り付けも可能。僕はそんなもの持ってないので試せません。

実際に使ってみて

ここからは実際にこの三脚を使ってみて感じたところを纏めていく。

良い点

超小型軽量が生み出す圧倒的機動力

この三脚のメリットはこれに尽きる、というかこれを求めて買うものなので、実際そこがどれだけ良いものなのかが大事。

そこで実際にバックパックのサイドポケットに突っ込んでバイクツーリングに行ってみたところ、「これ最高では?」となった。

まず普通の三脚と違って脚三本全てがポケットの中に収まる。ペットボトル並みの細さなので当然と言えば当然なのだが、普通の三脚では絶対に出来ない収納方法で、固定したときの安定感がすごい。

1.1kgと軽いこともさることながら、よりバックパックの中心に近い位置で固定できること、そして雲台の重量が軽いため重心位置も高すぎないだけあって「カバンを背負ったときに片側だけ重さが気になる」なんてことが全く無い。走りながら三脚を持ってきているのか怪しくなって何度か確認したぐらい存在感も無い。やはり小型軽量は正義。

思いついたところでパッと三脚を展開して、写真や動画を撮影する。これまで面倒だから三脚を持っていくという選択肢がなかった僕にとって、この身軽さは神がかっている。

使い勝手の良さ

あまり無駄な機能は無く、シンプルで使いやすいのがZERO Yの良さ。5段の収納された脚は、考えようによってはいちいちロックをする数が多くて面倒かもしれないが、逆に言えば5段階で足の長さをきちっと揃えることが出来るということでもある。自由雲台もスムーズに動いてサクッと画を決められるスピード感が有る。

ざっくり視点を決めて素早く撮影。そしたら直ぐに次の場所へ。なんて使い方にはめちゃくちゃ便利。

目線の高さまで上がる

このコンパクトさながらエレベーターを伸ばせば全伸長156.7cmと目線の高さぐらいまで伸びるのが特に良い。一般的にそこまでの高さでカメラを置くことはあまりないだろうが、別の使い方をすることも出来る。

僕はライトスタンド代わりにしてストロボを載せて撮影した。被写体に向かって斜め上から光を当てられるので、表現の幅がぐっと広がってくれる。ただ小さいだけの三脚では叶わない使い方だ。

イマイチな点

安定感がもう少し欲しい

小型軽量さの代償ではあるが、やはり安定感という点においては微妙に欠ける。カメラを載せた状態でその場を離れるのは少し不安に思う。

軽いのは仕方がないとしても、三脚の剛性感はしっかりとある割に不安に感じるのはなぜだろうと思ってよく観察してみたのだが、

  • 足の付根の間隔が狭い
  • 開脚角度の1段目が普通の三脚より少し狭い

という2点に気がついた。どうしても接地面にできる三角形の面積が狭いので、軽さ以外の理由で安定感に欠けてしまうようだ。

ただこの問題は、フックにカメラバッグなどの重しをぶら下げることで大抵は解消される。

また一番太い脚は直径約25mmだが、一番細い脚は直径約11mmとかなり細くなる。カーボン製でそれぞれかなり硬質ではあるが、伸ばすとどうしても多少はしなる。

多重露光したいので絶対にカメラが動いて欲しくない!と思うような使い方をするためには、いろいろなことに気を使う必要があるかもしれない。

付属のプレートに若干癖あり

付属のアルカスイス互換クイックシューには回り止めの盛り上がりが一箇所ある。

この回り止めのお陰で、カメラの形状にも依るだろうが固定位置がかなり限られる。手持ちのEOS 80D/90Dでは、重量バランス的にカメラ前側にシューを付けたくても付けられず、後ろ側にしか装着できないのがイマイチに感じる。

盛り上がり方もすごく微妙なので、干渉していることに気が付かずに締め付けてしまいそうでちょっと怖い。

また固定ネジも六角またはコインなどで締め付けるようになっているのも微妙。面倒くさいのでできれば手で締められると嬉しい。

そういった類いのネジはAmazonなどで多数売られているとはいえ、シュー自体の厚みが無いのでなかなか適合するものが無さそう。シューの使い勝手もイマイチなので、F38等のアルカスイス互換シューを買い足そうか悩んでいる。

付属工具はおまけ

エレベーター下部に収納されている付属工具なのだが、実はそんなに精度が良くない。端面の処理もかなり適当で、自動車整備とかする人からすれば「うーん・・・」って感じの出来になっている。全体的なビルドクオリティがめちゃくちゃ高いだけにここは残念。

しかし、そもそも力のかけづらい構造になっているし、どちらかといえば緊急用なイメージの工具なので、「有ると無いとでは大違い」であることには間違いない。普通に整備するときにはきちんとした工具を使ったほうが良い。

虹色の憧れ。PB SWISS TOOLS ボール付ロングレインボーレンチセット 212LH-6RB
機械を触る人なら誰しもが持っている六角レンチ。六角レンチだアーレンキーだヘックスだととにかくいろんな名前で呼ばれるこいつだが、当然僕も持っていて結構そこそこ使用頻度が高い工具でもある。 長い間僕の工具箱にはVesselの六角ボールポイントレ

Ulanzi&COMAN ZERO F38との違い

ところで、Ulanziのトラベル三脚にはZERO F38というモデルも存在する。そちらはUlanzi独自クイックリリース機構であるF38規格に対応した三脚で、ZERO Yとの主な違いは雲台の形状のみ。基本機能は変わりないので、アルカスイス互換で使いたい人はZERO Yを、F38をよく使う人はZERO F38を使えばOK。

ちなみに僕がZERO Yを選んだ理由は…将来的にアルカスイス台座の付いた望遠レンズ欲しいなと思ったから。

ただし、ZERO F38とZERO Yでは水準器の形状が異なり、ZERO F38は一方向の水平しか見ることができない。せっかくのパン機能があるのでZERO Yと同様の水準器が搭載されていればいいのになと個人的には思う。細かく見るとアルマイトの色が違ったりもする。

またZERO F38には好きな雲台を載せる用のアタッチメントが付属する。このアタッチメントは別売りされているので、ZERO Yユーザーでも必要となれば買い足せば良い。

トラベル三脚の究極形

世の中に「短く収納できる」トラベル三脚は数多あるが、「直径が小さくなる」三脚はほとんど存在しない。この商品は数少ないそのカテゴリーに置いて、手の届きやすい価格と十二分なスペック、そして決して安くはない価格に納得できるだけの使い勝手と身軽さを備えている。

Ulanzi & COMAN ZERO Yは、まさに旅に出るために在り、旅の自由を増やすことのできる三脚だった。カバンの空いたスペースには、お土産を一つ増やす余裕すらある。

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