DJI Osmo Pocket 3を購入して1年が経過した。いろいろな場面に持ち出して撮影をしてみたが、結論から言ってしまうと
このカメラが1台あれば、YouTubeレベルの動画撮影はほぼ完結する
といってもいいレベルで使える素晴らしい1台だと感じた。1年使ってみて感じたことを書いていく。
DJI Osmo Pocket 3

DJI Osmo Pocket 3は2023年10月に発売したジンバル一体型の小型カメラ。僕は2024年5月に購入した。ジンバル一体型故に、アクションカメラのようにクロップして手ブレを抑えるのではなく、物理的に手ブレを抑えることで高画質な映像を撮影することができるカメラだ。
スペック
モデル名 | DJI Osmo Pocket 3 |
サイズ | 139.7×42.2×33.5 mm(長さ×幅×高さ) |
重量 | 公称値179g 実測値180g |
マイクの数 | 3 |
ジンバル操作可能範囲 | パン:-235°〜58° チルト:-120°〜70° ロール:-45°~+45° |
ジンバル機械的可動範囲 | パン:-240°〜63° チルト:-180°〜98° ロール:-220°~63° |
ジンバル最大可動速度 | 180.0°/秒 |
ジンバル角度ぶれ範囲 | ±0.005° |
センサー | 1インチCMOSセンサー |
レンズ | 焦点距離:20 mm(35mm判換算) 絞り:f/2.0 フォーカス範囲:0.2 m 〜 ∞ |
ISO感度 | 写真:50〜6400 動画:50〜6400 低照度動画:50〜16000 スローモーション:50~6400 |
電子シャッター速度 | 写真:1/8000秒~1秒 動画:1/8000秒~1/X秒(X:フレームレート設定値) |
標準録画モード | 4K (16:9): 3840×2160@24/25/30/48/50/60fps 2.7K (16:9):2688×1512@24/25/30/48/50/60fps 1080p (16:9):1920×1080@24/25/30/48/50/60fps 3K (1:1):3072×3072@24/25/30/48/50/60fps 2160p (1:1):2160×2160@24/25/30/48/50/60fps 1080p (1:1):1080×1080@24/25/30/48/50/60fps 3K (9:16):1728×3072@24/25/30/48/50/60fps 2.7K (9:16):1512×2688@24/25/30/48/50/60fps 1080p (9:16):1080×1920@24/25/30/48/50/60fps |
スローモーション | 4K (16:9):3840×2160@120fps 2.7K:2688×1512@120fps 1080p:1920×1080@120/240fps |
低照度動画 | 4K (16:9): 3840×2160@24/25/30fps 1080p: 1920×1080@24/25/30fps |
内蔵ストレージ容量 | 無し |
対応SDカード | microSD(最大1 TB) V30規格以上の物を推奨 |
オーディオ出力 | 48 kHz 16-bit、AAC |
バッテリー容量 | 1300 mAh |
動作時間 | 166分 25℃の室温環境下で、1080p/24fps (16:9)動画撮影、Wi-Fiオフ、画面オフの状態で測定。 |
充電時間 | 16分(80%までの充電)、32分(100%までの充電) DJI 65W PD規格対応充電器(別売)を使用して、ラボ環境下で測定。 |
Wi-Fi | 802.11 a/b/g/n/ac |
Bluetooth | BLE 5.2、BR/EDR |
その他 | DJI Mic 2やMic Miniを2台接続可能 |
スペック上で特筆すべき点はここ。
- 1インチCMOSセンサー搭載
- 4K 120fps撮影が可能
- 充電が早い
- マイクを2台無線接続可能
まず1インチのCMOSセンサーは小型カメラに搭載されるものとしてはかなり大きい。これ故に高画質な映像が撮れたり、暗所に強かったり、ダイナミックレンジが広かったりする。ジンバルと組み合わさることでこのセンサーが強力に生かされている。
4K 120fpsでの撮影が可能なのも強い。実際にやるかどうかは別としても、4Kで撮影した動画をコマ落ち無しで1/4倍速までスローモーションさせることが可能。
ただこれ、通常動画モード内では60fpsまでしか選べない。動画モードをスローモーションに切り替えないとできないところがちょっとめんどくさい。さらに低照度(ナイトモード)に設定すると最大30fpsまで落とされる点には注意が必要。このあたりは若干使い勝手が良くない。
充電が早いこともPocket 3のポイント。このカメラはバッテリーが内蔵で交換できないので、素早く充電できることが非常に重要。そういう点もあってクリエイターコンボに付属するバッテリーハンドルがかなり重宝する。
そして何よりDJI Mic 2やMic Miniが2台接続可能なのが嬉しい。これにより撮影が大幅に楽になる。
クリエイターコンボは充実の内容


僕が購入したクリエイターコンボには様々なアクセサリーが付属していて、実際にこれはかなり便利に使っている。ほぼ使っていないのはミニ三脚と延長ハンドル、Type-Cケーブルぐらい。
広角レンズやバッテリーハンドルはほぼ必須とも言って良いアイテムだし、DJI Mic 2もあるとめちゃくちゃ使える。キャリーケースは窮屈さが否めないが、保護ケース含めどれも使っているのでクリエイターコンボの購入はかなりおすすめ。後から買い足すより断然安い。
外観


ジンバル一体型カメラということもあってPocket 3の外観は少し特殊。プラスチック筐体だが安っぽさはあまり感じられない造りで、質感は悪くない。各部のボタンもしっかりしていて操作しやすい。

底面には充電用のType-C端子とバッテリーハンドルなどが取り付けられる溝がある。また画面側から見て左側面にはmicroSDカードスロットが存在。

サイズ感は僕の手にとっては若干小さい。操作するに当たり不自由は無いが、「もう少し下に長いほうが安定感があるのにな…」と思わされる程度。

ただその点はバッテリーハンドルや延長ハンドルを取り付けると解決する。むしろこのサイズがちょうどいい。
Pocket 3の素晴らしい点
- 起動が早い
- 充電が速い
- 自然な色味
- 雑に持っても安定感ある映像が撮れる
- デジタルズームが結構使える
- 縦動画も簡単に撮れる
- 内蔵マイクの音質が割と良い上に指向性が選べる
- DJI Mic 2やMic Miniに2台無線接続できる
起動が早い
Pocket 3は起動が早い。その日の初回起動でも5秒もかからないし、一度起動させた後なら1秒以内で機動する。画面を横にくるっと回して起動する動作はなんかかっこいいし、録画ボタンを押しての起動も簡単でいい。起動の早さは機動力の早さ。
充電が速い

Pocket 3はちょっとびっくりするぐらい充電速度が速い。スペック上は65W PD規格対応充電器で32分でフル充電となっているが、実際それぐらいのスピード感で充電してくれる。バッテリー交換式ではないPocket 3を使うにおいてこのスピード感はかなり心強いので、フル活用するために65W前後の出力のある充電器を一つ持っておくことをおすすめする。
自然な色味
Pocket 3に限らずDJIのカメラは比較的自然な色味を出してくれる。GoProに比べると派手さが無いとも言えるが、後から編集することを考えればこちらのほうが都合が良い。ダイナミックレンジもかなり広く、白飛びや黒つぶれしづらい点も素晴らしい。
こだわり派や映画撮影などをする場合には10-bit D-Log Mと10-bit HLGカラーモードでの撮影も可能。後からガンガン色味を調整したい人はこのモードに設定するのが良い。が、標準カラーモードでも色味に演出感が少ないので、個人的にはノーマルモードで十分に思う。
雑に持っても安定感ある映像が撮れる
ジンバル一体型のメリットがまさにこれで、割と雑に撮影してもブレの少ない安定感のある映像が撮れる。例えば足元の悪い場所を歩いたり、車の中から外を撮影したりといった場面で、片手で適当にカメラを持っていたとしてもPocket 3はかなり安定感のある映像を撮ってくれる。これが本当に助かる。適当でも水平が出ているのも素晴らしい。

ただしジンバルサイズ自体は決して大きくないので、大きな揺れに対しては対応できない。めちゃくちゃしっかりブレを抑えたいと思ったときには、集中してカメラ操作をする必要がある。
デジタルズームが結構使える
デジタルズームが割と使えるのも嬉しいポイント。焦点距離が35mm判換算で20mmなので、少し遠いところは小さくなりがち。こういうときにデジタルズームが使えて、なおかつ画質もそこまで劣化しないのが良い。

しかも2025年3月のアップデートで追加された「中望遠モード」がすごい。画面中央下にある「」マークを押すと、焦点距離が倍の40mmになる。しかもデジタルズームで2倍にしたときよりも画質劣化が少ない。
中望遠モードは若干使える条件が限られているが、うまく使うと被写体にぐっと寄ることができて、映像に幅が生まれる。
縦動画も簡単に撮れる

Pocket 3だと縦動画の撮影もめちゃくちゃに簡単。画面を縦にすれば縦動画に切り替わり、そのまま画面いっぱいに映像が映しだされる。縦動画をメインで撮影したい場合にもかなり有効に使える。
内蔵マイクの音質が割と良い上に指向性が選べる
Pocket 3は内蔵マイクの音質が割といい。撮影者自身が話すような動画であれば他にマイクを用意しなくてもなんとかなるし、適度な距離感の被写体の声であればかなりクリアに録れる。ノイズ低減機能をオンにすれば、多少の風のある環境でもどうにかなる。

しかも音の指向性が「全方向」「前方」「前方&後方」の3種類から選べる。場面に合わせて指向性を選ぶと、よりクリアに声を録音できる。これが結構使える。
DJI Mic 2やMic Miniに2台無線接続できる

そして何よりDJI Mic 2やMic Miniに外部アダプター無しで直接無線接続できる。しかも2台。離れたところにある音や、2人の掛け合いなどを撮るときに非常に便利だし、それが超コンパクト構成で実現可能。荷物も少ないしカメラが無駄に大きくなったりしないし、とにかく手軽に2ch音声が録れるのは素晴らしい。
さらに裏技的な方法を使うと最大3chの音声収録も可能。ここまでやるとかなり幅広い撮影ができるようになる。
Pocket 3の今一つな点
- バッテリーの持ちが若干不安
- 場合によっては画角が若干狭い
- 標準だと三脚穴がない
- トラッキングの動きが機械的
バッテリーの持ちが若干不安
Pocket 3のバッテリーは公表値166分だが、これは若干不安になる数字。実際僕が経験した場面では半日持たなかったときもあったし、1日の間にちょこちょこ撮影するような時でも電池残量に不安を覚えた事があった。

これゆえバッテリーハンドルはほぼ必須アイテムになる。僕はそこまでの必要性を感じていないが、もし長時間撮影するならバッテリーハンドルを複数個用意したいかもしれない。
ある程度休憩時間が取れるなら、その間にPocket 3もバッテリーハンドルも充電してしまおう。幸いなことにバッテリーハンドルも充電速度はかなり速い。
画角が若干狭い
場合によるが画角が若干狭いと感じることはよくある。ちょっと狭い部屋だったり、ちょうど腕を伸ばした先ぐらいにいる人を撮影したいような場面だと明らかに狭い。焦点距離が35mm判換算で20mmだが、もう少し広いほうが扱いやすい。

ちょっと狭いなと感じたときは広角レンズをパチっと付けるだけで一気に解決する。焦点距離を35mm判換算で15mmへと広げてくれる広角レンズも必須アイテム。だが、広角レンズを無くしそうで怖いなと感じることもちょっとある。
標準だと三脚穴がない

Pocket 3には標準状態だとどこにも三脚穴が無い。三脚穴が欲しい場合は延長ハンドルかバッテリーハンドルを取り付ける必要がある。使いたい三脚にも寄るが、これを付けるとちょっと高さが高くなりすぎると感じる場面もあって少し困る。

それを解決するために僕はサードパーティ製のアダプターを買ってみたが、これはこれで便利な部分と不便な部分もあったりする。ちょっと悩みどころ。
トラッキングの動きが機械的
Pocket 3は顔認識などで特定の人物をトラッキングする機能がある。ジンバル一体型の構造を活かして、カメラは三脚に固定されているのに、まるでカメラマンがいるかのように被写体を追い続ける撮影が可能なのだ。
これは確かにすごい機能なのだけど、個人的にはこのトラッキングの動きが少し機械的すぎるというか、明らかに人間の動きではなくて少し映像に違和感を覚える。
カメラマン無しで撮影するときには重宝する機能だが、カメラマンがPocket 3を持って撮影するならトラッキング機能はOFFの方が良い。
YouTube動画撮影ならこれ一台でほぼ完結できる
Pocket 3を実際に1年間使ってきて思ったのは、これがほぼほぼこれ一台で動画撮影を完結させられるすごいカメラだということ。
もちろん一眼カメラや映画撮影用カメラのような繊細なフォーカシングはできないし、望遠レンズが無いので遠くは撮影できないし、もちろんマクロレンズもないので近くも難しい。超広角はアクションカメラに負けるし、ジンバル一体型ゆえに車内では横Gで思ってないところにカメラが勝手に向いたりする。ジンバルの動きに対する人間の慣れも多少必要。

そういう専門的な部分を除けば、ほとんどの場面において動画撮影はPocket 3だけで事足りる。これ一台を持っておけば、大体の場面は撮れる。これが手のひらサイズに収まっているという事実がとんでもなくすごい。
スマホ以上のクオリティで動画撮影したいと思ったら、Pocket 3はほぼほぼ最適解になるだろう。YouTube用の動画を撮るなら手持ちカメラはこれ1台で十分だと、僕は本気で思ってる。


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