スマートウォッチに求めるものは人それぞれだろうが、個人的には【普通の腕時計と変わらない使い心地】と【スポーツに使える】という2点を重視したい。前者は言うまでも無く腕時計として必要最低限な機能だが、後者は運動するキッカケと継続するモチベーションを与えてくれるから。運動嫌いな僕はこういうものがないとやる気が続かないのだ。
Amazfit Bip S
というわけで、今回入手したのが、中国のスマートウォッチブランドAmazfitから、2020年4月末に発売されたばかりの新商品【Amazfit Bip S】。およそ$80前後で販売されている手軽なスマートウォッチで、ジェネリックアップルウォッチとして話題になったAmazfit Bipの後継版だ。
今回は中国通販サイトのBanggoodより提供を受けてレビューを行っている。
Amazfit Bip Sのスペック
モデル名 | Amazfit Bip S |
サイズ | 42×35.3×11.4mm |
重量 | 31g |
ボディ素材 | ポリカーボネート |
ストラップ | シリコン・TPU製, 20mm幅 |
防水性能 | 5ATM |
ディスプレイ | 1.28インチ 半透過TFT液晶64色カラー 176×176px 画面常時表示 |
タッチスクリーン | 3三世代目のゴリラ強化ガラス 指紋防汚性コーティング |
センサー | BioTracker™PPGバイオトラッキング光学センサー(心拍計) 3軸Gセンサー 3軸地磁気センサー |
GPS | GPS + GLONASS対応 |
Bluetooth | BT5.0/BLE |
バッテリー | 200mAh リチウムイオン電池 |
充電時間 | 約2.5時間 |
使用時間 | 基本的な使用状況:40日 一般的な使用状況:15日 スタンバイ:90日 GPS使用時:22時間 |
OS | Amazfit OS |
対応デバイス | Android 5.0 または iOS 10.0 以上 |
他製品と比較するにあたっては、
- 軽量さ
- 画面常時表示が可能
- 使用時間の長さ
- GPSを内蔵
- Bluetooth5.0対応
などが個人的には重視したいポイント。
アップルウォッチ風の見た目
外箱を開けると白い化粧箱が現れる。ここはAmazfit GTRと同じ演出でなかなかかっこいい。
中身は、本体・USB充電ドック・取扱説明書だけと超シンプル。四角いフェイスがまさにアップルウォッチっぽい。リューズ風の物理ボタンは右側に一つだけ存在する。
見栄えとしては値段相応。チープな感じがあるわけではないのだが、フォーマルな服装が求められるような状況だとおもちゃっぽく見えてしまうかもしれないレベル。
裏には大型のBioTracker™PPGバイオトラッキング光学センサーと、充電ドック用の端子が備わる。
充電はドックにパチッとはめるだけで可能。マグネット固定ではないので、その分グイっと持ち上げて外さねばならないのは残念だが、その分確実な充電が行われる。
常時表示なのに圧倒的な電池持ちを実現
Amazfit Bip Sの美点、それは電池持ちの良さ。半透過型のカラーディスプレイを搭載し、外部の明かりを利用してディスプレイを鮮明に映し出す仕組みとなっている(暗いところではバックライトが点灯する)。さらに光学式心拍センサー、そしてGPSセンサーが進化したおかげで、どちらも高精度に進化した上に省電力化を実現したという。
これによって基本的な使用状況では40日間、一般的な使用状況では15日間の連続動作時間を達成している。
※一般的な使用状況:工場出荷時のダイヤル、毎分心拍数測定、睡眠モニタリング。1日あたり150通の通知で画面が明るくなり、手首を持ち上げて時間を30回表示、その他の操作は5分。GPSをオンにして、週3回30分間運動。デフォルトの明るさは60%。
10種類のワークアウトに対応
Amazfit Bip Sは以下の10種類のワークアウトの計測に対応している。
- 屋外ランニング
- 屋内ランニング
- サイクリング
- 屋内サイクリング
- フリー
- ウォーキング
- 屋内水泳
- プール
- クロストレーナー
- ヨガ
特にGPSを内蔵しているので、スマートフォンを家や車の中に置きっぱなしにした状態でランニングなどのワークアウトの記録を残せるのが嬉しい。
防水性能は5ATM(メーカー曰く「水深50mまで防水」)。普通の5気圧防水だとすれば、多少水に濡れるぐらいなら大丈夫だろうが、水泳ができるのかどうかは微妙なところ。防水性能のIPXを取得していないのは、おそらく表記に必要な試験を行っていないためだと思われる…。
Amazfit Bip Sの初期設定
Amazfit Bip Sのリューズを押して起動すると、言語選択が出てくる。「日本語」を選択。
Amazfit Bip Sの使用には純正のAmazfitアプリをスマートフォンにインストールして、登録を行う必要がある。
インストール後サインインをしたら、ホーム画面右上の+ボタンをタップ。
ペアリングするデバイスの「腕時計」を選択。
Amazfit Bip Sを選択。
スマートフォンでAmazfit Bip S上に表示されているQRコードを読み取ると、接続が開始される。
接続後はソフトウェアアップデートなどが行われる。ちょっと時間がかかるが、それが終わり次第使えるようになる。
文字盤の変更はアプリから
Amazfitアプリのプロフィール→Amazfit Bip S→文字盤設定から、表示される文字盤を変更できる。記事執筆時点で35種類の文字盤が選択できた他、有志による配布もあるとかないとか。
実際に使ってみてのレビュー
◎常時表示なので普通の腕時計と何ら変わらない
Amazfit Bip S最大の良い点は、常時表示が可能な文字盤にある。半透過式の液晶パネルを使用しているため、常時表示にしていても(というかそれしか設定が無い)電池持ちに影響が少ないのだ。おかげでちらっと時計に目を向けただけの時にも文字盤が表示されているので、時間が知りたいときに大げさに腕を動かしたりする必要が無い。
要するに普通の腕時計と全く変わらない使い心地なのだ。常時表示ができないスマートウォッチを使っている人なら、このストレスから解放される素晴らしさが分かるはず。
◎恐らく無充電で20日間連続使用できる超耐久性
お風呂に入るとき以外の24時間を、15分程度のGPSを利用したワークアウトを含め使ってみたのだが、電池の消耗は5%しかなかった。このペースで行けば20日は使える計算になる。
GPSを使用すると電池の消耗が早いようだが、実際にはそんな毎日ワークアウトをすることはないと考えると、使用状況次第ではメーカーの言う40日間連続使用はあながち嘘ではない。というか本当にあり得る数値だと思う。
◎ディスプレイの高い視認性
さらに文字盤の視認性もかなり高い。斜め方向からは若干ガラス面の反射があるため視認性が落ちるが、基本的にはくっきりはっきりと文字が表示されている。外部からの明かりを利用するディスプレイの仕組みゆえ、明るいところであればあるほど視認性が向上する。実際に昼間の屋外で使用すると見やすさが際立つ。ランニング中などにもちらっと見るだけで確認できる。
屋内での蛍光灯の明かりでも視認性は十分。見にくいと思っても(使用時間が多少犠牲になるが)バックランプの明るさを上げればかなり見やすくなる。腕を持ち上げると、半歩送れる感じはあるが自動でバックランプが点灯するので、暗いところでの使用も問題なし。
◎超軽量なので付けている感が薄い
重たい腕時計は付けていると左手だけ妙に疲れたりすることがあるが、Amazfit Bip Sは実測でも31gと超軽量なので、重量感だけで言えば装着感がかなり薄い。付けていることを意識しないのはとても嬉しい。
△付属のベルトはちょっと蒸れる
ベルトはシリコン製で適度な弾力があるので腕にしっかりと固定できるのは嬉しいのだが、しっかりくっつきすぎて少々蒸れるのが難点。質感もそこまでよくはないし、箱から出した時は少しゴム臭さがあった。
20mm幅のベルトが使用できるので、気になる人はもっと通気性の良いものに交換するといいとおもう。
【追記】後日社外のバンドに交換したところ、非常に快適になった。バンドの交換は絶対オススメ。
○タッチパネルの操作感は普通
高級なスマートフォン並みにヌルヌル動くということはないが、操作感に特に問題は無い。動作は軽量で、スッスッと動く。ボタンは一つだけであとはタッチパネル操作となるが、UIは明解なので迷うことは特になかった。
ちなみにこのディスプレイ、誤タッチ防止のためか、リューズを押すかバックライトが明るくなっていない状況ではタッチしても反応しないようになっている。こういう細かい気づかいが嬉しい。
△フォントが微妙でドットの荒さが気になる
文字盤のサイズが1.28インチで176×176pxしかないため仕方がないのだが、Amazfit GTRのような美しい液晶パネルと比べるとドットの荒さが気になり、そこに映し出される画面の表示が美しいとは言い難い。全体のフォルムに対して画面占有率が低いのも、安物感を感じるポイント。
日本語に対応しているので各種の設定も当然日本語で出来るのだが、フォントがちょっと中国語っぽくて微妙な印象(他のAmazfit製品でも同様だが…)。もうちょっとまともなフォントが適用されるといいのだけども。
◎通知のスピードが速く、情報量も多い
通知のスピードは速く、連携しているスマートフォンが通知を出すのとほぼ同時にAmazfit Bip Sの画面にも出てきて、バイブレーションが起こる。振動は強すぎず弱すぎず適切なので、人混みや周囲の音が大きい場所でもわかりやすいと思う。静かな場所だと少し気になるかもしれない程度の音がするのは致し方なし。
四角いディスプレイを十分に生かしているので、通知の情報量も多い。通知が来てもAmazfit Bip Sをちらっと見るだけでおおよその中身は把握できる。
◎音楽プレイヤーの操作が可能
連携しているスマートフォンで音楽を流すと、その再生・停止・曲送りがAmazfit Bip Sからできる。個人的にはあまり活用することの無い機能なのだが、電車での通勤通学を行っている人は重宝しそう。ちなみにYouTubeの再生・停止もできた。
△スピーカーやマイクは無いので通話は不可能
Amazfit Bip Sにはスピーカーやマイクが搭載されていないので、残念ながら通話は不可能。この機能があると運転中にハンズフリーで電話できて便利だと思うのだが…。
△電子決済は非対応
Amazfit Bip Sは電子決済にも対応していない。僕は地方都市に住んでいて電車に乗ることなんてめったにないので、仮にあったとしてもその恩恵に与ることはほぼないのだけども、都市部に住んでいて電子決済をよく利用する人は減点ポイントかもしれない。
◎睡眠トラッキングの精度の高さ
睡眠時にもAmazfit Bip Sを装着して、睡眠トラッキングをしてみた。精度の悪い物だと入眠・覚醒時間がめちゃくちゃだったりするが、今回の結果を見る限りかなり正確な時間になっていて驚いた。バイオトラッキング光学センサーの精度の高さがうかがえる。
◎スポーツウォッチとして使えるGPSの精度の高さ
Amazfit GTRは見た目は最高なのだがGPSや心拍計の精度が低く、正直なところスポーツウォッチとしての性能は低かった。特にGPSの軌跡はめちゃくちゃで、速度や距離といった重要なデータがまともに取得できないという問題があった。
対してAmazfit Bip Sは、その精度が大幅に向上していた。メニュー画面のスポーツ→屋外スポーツを選択すると測位が開始されるのだが、試してみた限り開けた屋外で10~30秒以内には必ずGPS信号をキャッチできた。GPS+GLONASSのみの対応の割にはかなり速いと思う。
GPSのキャッチ後、スタートボタンを押すと3秒後に計測が開始される。
計測中はタイムや距離、速度、心拍数、ペース、歩数、歩幅などのデータが確認できる。現在時刻や電池残量は上に小さく表示される。
記録を停止するにはリューズを長押しすればOK。終了する際は左の停止ボタンを、再開する場合は右の再生ボタンをタップするだけ。
取得できたデータ(地図を消した状態)がこちら。少し道からぶれた部分はあったが、サイクリングやランニングレベルであればほとんど問題は無いレベルでの精度の高さが確認できた。残念なことといえば温度計や気圧計が搭載されていないため、高度の測定が不可能なこと。よりハードなトレーニングに使用したい人は別のモデルを使ったほうが良いだろう。
アプリ上でSTRAVA等の外部サービスと連携すれば、ワークアウトが自動的にそちらにもアップロードされるので、Amazfitアプリ以外での確認も可能。
高い完成度を持つ、”普通に”使えるスマートウォッチ
Amazfit Bip Sに対しては、正直なところ$100未満のスマートウォッチということであまり高い期待はしていなかったのだが、想像以上に”普通に”使えるスマートウォッチだった。
この手のウェアラブルデバイスは「無意識に使える」ことが最も大切だと個人的には思うのだが、Amazfit Bip Sはまさにそんなデバイス。常時表示の文字盤は常に見やすく、電池の持ちを心配する必要は全くない。通知が来ない限りはごく一般的な腕時計と何の変りもない。
さらにスマートウォッチとして求められる通知機能や睡眠トラッキングもしっかりあるし、心拍計は1分毎の計測とかなり細かい。その上内蔵されたGPSの精度も高いので、スポーツウォッチとしても十分に使える。
- 軽量さ
- ストレスレスな常時表示
- 驚異的な電池の持ち
- GPSやバイオトラッキングの高い精度
- 安価
と圧倒的なアドバンテージを持つAmazfit Bip S。確かに付属のバンドがしょぼかったり、人によっては欲しい機能が無かったりもするのだが、ベーシックなスマートウォッチとしては非常に高い完成度を誇っている一品。買って損は無いと思う。執筆時点ではまだ日本国内では販売されていないようなので、もしよかったらBanggoodから購入してほしい。
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