「単焦点レンズ使ってみたいな~」
と昔から思っていながら、いまだかつて手にしたことがなかった。と言うかCanon EOS 80D・90Dに付属するEF-S18-135mm F3.5-5.6 IS USMが非常に便利だし、SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSMがあれば望遠レンズも完全に事足りてる状況で、レンズが一本増えても使い道がない。
でも便利な標準ズームレンズで何でも撮影するより、単焦点レンズでじっくり構図を考えるような撮影もしてみたいし、何よりF値の低い、激しい前後ボケの世界観も見てみたい。その欲求は抑えられなくなった。
SIGMA 30mm F1.4 DC HSM | Art
というわけで前々から欲しいと思っていたSIGMA 30mm F1.4 DC HSM | Artを入手。昔に比べて少し値段が上がっていたのは気になったが、元値が低い分だけ中古と新品で大差がなかったので新品で購入。
レンズやフードの他に収納ケースなどの付属品があった。どうせ使わないからその分安くしてほしい…。
2013年登場のAPS-C専用大口径レンズ
SIGMA 30mm F1.4 DC HSM | ArtはSIGMA Global Vision Series初期となる2013年に登場した、APS-C専用のレンズ。30mmという焦点距離はCanonのAPS-C一眼レフに装着するとフルサイズ換算で48mmとなり、人の視界に近いという50mmの焦点距離に近似する。
F1.4という開放度を持ちながら、2022年現在で定価が税込60,500円、実売価格が4万円前後という手の届きやすい価格であることも嬉しいポイント。
レンズ構成枚数 | 8郡9枚 |
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画角(DC) | 50.7° |
絞り羽枚数 | 9枚(円形絞り) |
最小絞り | F16 |
最短撮影距離 | 30cm |
最大撮影倍率 | 1:6.8 |
フィルターサイズ | φ62mm |
最大径×長さ | φ74.2mm×63.3mm |
質量 | 435g |
金属製のボディは重量感こそあるものの、質感、手触り共に非常に満足度が高い。SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG OS HSMはプラスチックを多用して軽量化を図っているのに対し、こちらはとにかくしっかりとした作りを意識しているようにも思える。
見てるだけでニヤニヤできるタイプのレンズはガジェット好きの心をくすぐる。
操作系はフォーカスリングと、左側にAF/MF切り替えスイッチがあるのみ。シンプル・イズ・ベスト。フォーカスリングは適度に重く、扱いやすい。
手持ちの18-135mmレンズと並べると、直径は同じぐらいだが明らかに短い。低価格な単焦点レンズとしてはかなりゴツい部類になるらしいのだが、個人的には結構小さくて持ち運びやすそうな印象。ただ小さい割には結構重たい。
Canon EOS 80Dに装着するとこんな感じ。レンズフード有りの状態だと左手でしっかりとレンズを支えることができるので持ちやすい。レンズフードを前につけた状態でも、手持ちのカメラバッグならどれもそのまま入ったので、スナップ写真も撮りやすそう。
ちなみにAF駆動用モーターは超音波モーター HSMが搭載されている。AFのスピードは十分で、動き出しはスッと、合焦点前後ではグググッと唸るような音が若干だが鳴る。また手ブレ補正機能は搭載されていない。
圧倒的なボケ感と描写力
せっかく開放度の高いレンズを買ったのだから、とりあえずF1.4で撮ってみたくなるのが人間ってもの。前ボケ後ろボケを完全無視して適当にシャッターを切ってみるのだが、開放でも恐ろしいほどの描写力の高さで気持ちがいい。手ぶれ補正は内蔵されていないものの、これだけF値を開けば必然的にシャッタースピードも上がるので、曇りがちな日に撮影したところで何の問題も無かった。
被写体にちょっと寄ってみるとボケ感が出てくる。前ボケにちょっとパープルフリンジが出るようだが、これも味といえば味だろう。F1.4という開放度が、本当にピンポイントで被写体を浮かび上がらせてくれるのがかなり楽しい。
撮っていてなんとなく、妙に黒いところや影が黒として強く表現されるように思った。シャッタースピードが速すぎてそういう風に映るだけかもしれないが…。
夜間撮影の自由度
今まで夜に撮影することは手ブレとの戦いだとばかり思っていたのだけども、SIGMA 30mm F1.4 DC HSM | Artを手にしたことでその考え方は大きく覆された。良いと思った空や景色にレンズを向けて、フッと一瞬力を入れるだけで、美しい景色が切り取られる。F値とSSの組み合わせで街の明かりの表現方法まで変わるのだと知れたのはこのレンズのおかげと言っても良い。最後の一枚なんて、信号待ちの車内からフロントウィンドウ越しに撮ったのだが、それでもこんなに美しく撮れることには驚きしか無い。
不自由と引き換えに自由を手に入れるレンズ
単焦点はズームできない分だけ不便だと思っていたし、実際使ってみてフルサイズ換算約50mmというのは思っていたよりも画角が狭く、本当にこれが人間の視野に近いのか疑問には思う。
しかし、圧倒的な開放度から絞っていくことで様々な表現を可能とし、APS-Cでは得難いボケ表現も手にできる。そして何よりArtを名乗るだけのカリカリの描写力と高い所有感。SIGMA 30mm F1.4 DC HSM | Artは、僕に不自由と引き換えに新たな自由をもたらしてくれた。
2022年12月時点で生産終了らしい…
SIGMA 30mm F1.4 DC HSM | Artなのだが、なんと2022年12月時点で生産終了しているらしく、残すはCanon用のみなのだとか。各社がミラーレスに移行する中、今どきAPS-C専用レンズなんて流行らない。ただEFマウントのものならレンズマウントアダプターを使うことで各社のミラーレスでも使えるので、この面白さはぜひ体験してほしいところ。
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